現時点での認識では、おおむね水温が14度から26度くらいなら、投げ釣りでキスに出会える確率は高いように思える。
このように考えるに至った訳を、以下の文章にまとめてあります。
新潟のキス釣りの例年のパターン 新潟では例年、南の上越・糸魚川方面から「キス前線」が徐々に北上していく。上越・糸魚川ではだいたい4月の下旬から釣れ始め、GWにはかなりの釣果が見られる年もある。 下のデータをご覧いただきたい。2005年から2010年までの、GW(ゴールデンウィーク)中の5月3日の、日本付近の海水温のデータを並べたものである。データは気象庁の日本近海の日別海水温のページからお借りした。
今年、2010年は、上越市付近でキスが釣れ始めたのが、5月の半ばを過ぎてからだった。それは、水温で言うと、だいたい13~14度くらいになった頃だった。 以上をまとめると、キスはおおよそ水温が12度を上回る頃から釣れ始め、14、5度くらいから活性が更に高まるというところではないだろうか。シーズン当初は、上述の気象庁の海水温のページで確かめてから釣行するのもいいだろう。 シーズン当初はまだ水温が低いためキスの活性が低く、アタリがあっても針に掛からないことも多い。そのようなときは、アタリがあってもすぐには巻き上げずに、しばらく仕掛けを置いて待つと釣れることもある。また、朝まずめよりも、日の高くなった日中や、午後からのほうが水温が上がって好釣果となることもしばしばである。 そして、6月ともなれば県内全域がシーズンインとなるのが例年のパターンで、梅雨の間にかけてキス釣りの最盛期となる。県内でも各地でキス釣り大会も開かれる。海岸からでもほんのチョイ投げで良型のキスがブルブルと掛かってくるのもこの時期である。子供でも楽しめるので、キス釣りには一番いい季節である。 水温もグングン上昇していく。そして、水温が20度を越える頃になると、キスも涼みたくなるのだろうか、少しでも水温の低い河口部に身を寄せていることがある。ノッコミも終わり、浜ではいまひとつ釣れたくなった頃になったら、川の中を狙ってみるのも手である。川の大きさにもよるが、案外上流までキスがいることに驚かされるだろう。 ただ、河口部を狙う場合は、しばらく雨が降らず、流れが穏やかな時というのが条件である。雨のあとで、茶色い水が勢いよく流れている時などは、キス釣りには向かない。雨が降って多少なりとも海の水温が下がると、また浜にキスが戻って来たりするので、やはりいろんな場所をあたってみるのがよいだろう。
梅雨が明け、7、8月の海水浴シーズンを迎えると、今度は水温が高すぎてキスは深場へと落ちていってしまう。真夏のキス釣りは、ポツポツ拾うのがやっと、ということも多い。また、日中は暑すぎて、釣るほうとしてもダメージが大きい。 盛夏のキス釣りを水温から見ると、「何度以上だと釣れない」ということはないだろう。2010年は統計的にはここ100年で最も暑い夏だったようであり、新潟では最高で水温が30度に達したときもあったが、今シーズンの真夏の海水浴シーズンの水温は概ね28度程度だった。このような時期でも、さすがに6月頃の最盛期のようには釣れないが、それでもまったく釣れないわけではない。 炎天下の季節でキスを狙うなら、水温の低いところや時間帯がポイントとなる。すなわち、河口付近、山や建造物などの陰になるところ、水深の深いところ、朝まづめ、夕まづめ、夜間などである。暑い時期はキスも涼しいところを好むので、そのようなところを狙ってみる価値はある。
暑い夏が過ぎて9月に入っても、なかなかキスの好釣果は戻らない。この時期はまだ水温が高いのに加え、秋雨前線の影響で海が荒れることが多くなる。このためキスは今ひとつだが、9月以降は河口付近をメインに冬にかけてハゼ釣りの季節となる。キスは9月以降は、新潟では下越地区のほうが例年好釣果が見聞きされることが多いように思う。多少なりとも水温が低めなのが影響しているのかもしれない。 9~10月にかけては、その年に生まれたキスたちが釣れ始める時期である。投げても掛かってくるのはピンギスばかりということも多い。また、この時期は他にもマダイ(チダイ)やクロダイやスズキなど、その年に生まれた子供たちが掛かってくる時期でもある。こうした稚魚は、人間の子供同様に宝である。そっと海に返してやりたいものだ。 そして、秋雨前線がいなくなって秋晴れの季節がやってくると、やっと待ちに待った落ちギスのシーズンとなる。この時期は、キスが越冬前に最後の荒食いを見せるときである。キス釣りマニアだけが知る隠れた好シーズンであり、人影まばらな海岸で、密かな好釣果を得られることもある。 2010年は、落ちギスらしい釣果が見られ始めたのは、水温から見ると、24度を下回ったあたりからであった。 2010年10月24日、村上市の塩谷で私もキス釣りをした。そのときはキスの26cm級2尾を含む、70匹の好釣果が得られた(その日記はこちら)。この日の水温は、22~23度ほどであったようだ。これは事実としてメモしておく価値があると思う。 ちなみに、2012年は、県内で落ちギスらしい釣果が各地で見られ始めたのは、水温から見ると、26度あたりからであった。 この落ちギスの時期の好適水温についてはまだ私も勉強不足なので、今後の課題としていきたい。
落ちギスは固まっていることが多く、群れを見つけると大釣りとなることもあるが、ちょっと群れからずれるとぱったり釣れなくなったりもする。なるべく移動して、キスの群れを見つければ、しめたものである。生まれたばかりのピンギスも引き続きまじるが、ピンギスは翌年また遊んでもらえるよう、海に返してあげたいものである。 11月に入ると、越後新潟には暗い雲が立ち込め、冷たい雨の降る、寂しい季節となる。いよいよ冬の入り口である。そろそろカレイがノッコミを迎える時期でもある。しかし、小春日和の穏やかな日には、まだまだキスが釣れる。 とはいえ、キス狙いの釣行も、11月で終わりなのが一般的だろう。後は、投げ釣りではカレイ・アイナメの時期となる。
さて、水温から見たキスシーズンの終わり、すなわち、水温が12~14度になるのはいったいいつ頃なのであろうか。実は、一般には意外であろうと思われる事実がある。 下のデータは、新潟県全域を12度の等温線が覆っていた、そのシーズンの最後の日のものである。
しかし、仮に水温がキスの活性の限界温度である12~14度であったとしても、そこは冬の新潟、日本海の荒波がそこには存在する。 古来、「濁りと波は、キス不在」という格言があるように、いくら水温は適温とはいえ波が荒くては釣りにならないし、加えて寒風吹きすさぶ、冷たい雨や雪の降る冬の新潟では、釣る方も足が向かなくなるのは至極当然のことである。このため、冬のキス釣りの場合は、水温が12~14度以上だとしても、「天候、海況が穏やかなとき」という条件が付く。 事実、2009年の12月には、新潟東港周辺や、新潟・山形県境の鼠ヶ関港でも、キスの30匹程度の釣果が見られた。2009年の終盤は、2010年1月の中旬まで水温が12、3度はあったことから、水温から見れば12月にキスが釣れてもおかしくはない状況ではあったのだ。 新年の投げ釣りは、カレイ・アイナメから始まるのが一般的だろう。好きな人は冬の晴れ間を見つけて出かける向きもあるだろうが、一般的には3月に入ってからカレイ釣りが始まるといったところではないか。 そしてまた4月下旬、上越・糸魚川方面からキスの型が見られてシーズンインとなり、以下繰り返しの新潟のキス釣りの1年である。
以上をまとめた新潟のキス釣りの最的水温帯は、概ね15~26度程度というのが目下のところの結論である。春から秋にかけての時期でこの水温帯なら、投げ釣りでキスに出会える確率は高いように思える。気象庁の海水温のページで水温を調べ、あとは天候や波の具合を見て出かければ、好釣果に出会える確率は高くなる、かもしれない!? 上記が例年の新潟県での一般的なキス釣りの一年のイメージであるが、これは主に私のホームグランドである中越地区のイメージであるので、上越、下越では少し違うかもしれないし、もちろん年によっても異なることがあるのはお断りしておく。
※その他のキス釣りの季節や時期などについて気づいたことのメモ これは私が見聞きしたところでは中越地区(寺泊~出雲崎~柏崎)での知見なのだけれども、初夏にアオサが海岸に寄せてくる時期があるのだが、その頃はまだキスの盛期にはやや早く、それから2週間前後で投げ釣りのキス釣りの最盛期となるそうである。そのことなどを書いた日記はこちら。 以下のことは2013年に気づいたことなのだが、2013年は海水温が上がってきても今ひとつキスの釣果が伸びなかった。2013年は4月21日に東京の都心で気温5度となり48年ぶりの寒さを記録するなど、春先に寒い日が多かったのだ。中越地区にあるカミさんの実家の山に出るタケノコも2週間ほど遅れた。こうした例もあり(挙げた例が適切かどうかは置いといて)、海中で起こるべき海水温の上昇も遅れ、それが海中での生態系にも影響を与え、例年よりもキス釣りの最盛期が後ずれしたのではないだろうか。まあそういう年もある。それもまた自然相手の遊びの難しさ、もどかしさではある。
シロギス資源の有効利用を考える 海洋課 森 直也
1 はじめに シロギスは夏に旬をむかえ、刺身、天ぷら、焼き物として人気があるほか、釣った時の「ひき」が強いため子どもから大人まで遊漁の対象としても根強い人気のある魚です。よく似た魚に焼き物やつみれで馴染みのある「ニギス」がいますが、両者は全くの別物です。外見的な特徴は図1のとおりです。
2 資源と生態の特徴 シロギスは北海道南部から九州までの各地沿岸域に普通にみられる魚で、新潟県内においても本土側、佐渡側でそれぞれ獲られていますが、なかでも阿賀野川以北の北蒲原から山北にかけての沿岸域は古くからシロギスの良い漁場として知られております。県内沿岸での シロギスの生息場所は水深70m より浅い海底で砂地を好みます。春になり水温が上昇するにつれて越冬場(水深70m 前後の水域と思われます。)から沿岸に移動し、夏から秋の初めにかけて産卵を行い、この間、遊漁の対象ともなります。秋も深まり水温が下がってくると再 び深みに移動して越冬するという季節的な深浅移動を行います。このような移動は、ヒラメやマダイのように広い範囲にわたるものではなく、比較的限られた範囲だと考えられております。 産卵する親の大きさについては、これまでの調査結果からほぼ全長(頭の先から尾びれの先までの長さ)12㎝以上と思われます。先ほど産卵時期は夏から秋の初めにかけてと申しましたが、シロギスの場合、サケ・マス類のように1回で産み終わるのではなく、長期間にわた って何回も産卵するという特徴をもっています。産卵を分散させることで、卵や子どもが受ける危機を分散させて少しでも多くの子孫を確保しようという戦略をもった魚であるといえます。卵からふ化した仔稚魚は表層近くに分布しているようで、表層曳きの卵稚仔ネットで7~8 月 頃多数採集されます。表層を漂っていた仔稚魚はその後海底に棲むようになり、全長約5 ㎝くらいまではごくごく岸よりの沿岸域に分布し、成長とともに、また、秋から冬にかけて沖合へと棲み場所の範囲を拡大するとされています。おそらく卵から底生生活に移行するまでの間 に相当の数のシロギスがふ化できなかったり、飢えや他の魚に食べられたりして減っているものと考えられます。 昨年9 月にキスこぎさし網で獲られた標本の鱗から年齢を調べ、大きさとの関係を求めたところ、1 年魚で全長17 ㎝、2年魚同19 ㎝、3年魚同23㎝という結果が得られました。ただ、産卵期間が比較的長いことから、早い時期に生まれたものと遅い時期に生まれたものでは 成長に開きがあることが十分予想されます。このため、1年魚を中心にキスこぎさし網では十分な標本数が得られない全長15 ㎝未満のものについても年齢を調べて大きさとの関係を再検討する必要があります。
3 漁獲動向 本県における漁獲量(属地)は近年110 トン前後を推移しており、粟島、山北から間瀬までの県北部海域で主に獲られています。月別にみるとほぼ周年にわたって獲られていますが、6月~10 月にかけて比較的まとまった量の漁獲がみられます。また、漁業種類別にみると 夏場(6月~9月)にはキスこぎさし網等のさし網によって、秋から春にかけては板びき網、かけまわし等の小型底びき網によっても獲られ、平成7年から平成11 年までの過去5か年間では年間漁獲量の56%がさし網、41%が小型底びき網によるものでした。昨年7月以降、いつ、どのくらいの大きさのものが、どのくらい獲られているのかを調べています。
4 資源をよりよく利用するために シロギスに限らず、魚の資源を将来的にも絶やすことなく利用するためには、子どもの魚を獲らない、卵を産む前の親を獲らないことなどが大切であると考えます。成熟する前の小さいうちに獲っていては漁獲量を増やすことはできませんし、漁業経営に影響の大きい漁獲金額を伸ばすことも期待できません。 シロギスでは10g の未成魚(2月から4月頃)を獲るより、約6 ヶ月ほどの期間をおいてそれが25g の成魚(8月から10 月頃)にまで成長してから獲る方が得だと考えられます。確かに成長するまでの間にヒラメなどの他の魚に食べられたりして自然に死ぬかもしれませんが、生存率が40%以上であるならば、やはり成長してから獲る方が得であると言えます。成長を待たずに若くて小さい魚を獲ることを不合理漁獲と呼びます。資源を将来的にも絶やすことなく利用するためには徹底した未成魚の保護が必要になってきます。仮に10gの未成魚が25g になるまでの生存率が80%とします。10g の未成魚が100 万尾では10 トンとなりますが、約6ヶ月後には25g の成魚が80 万尾で20トンとなって2倍増になります。また、この間7月から8月頃には少なくとも1回は産卵に関わることもできます。このように、未成魚を温存することは、漁獲量への貢献のうえでも、卵を産んで次の世代に子孫を残す意味でも、大きな価値をもっているといえます。途中経過ではありましたが、シロギス資源の有効利用を考えるために、どんな調査に取り組み、こんなことを思っているということを紹介いたしました。
*(文中の「ニギス」はWEB魚図鑑のページです。)
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