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この勝木浜には、思い出が沢山あります。今では写真のように数人しか竿を出せない狭い釣り場になってしまいましたが、昭和50年頃まではテトラの前に15mほどの幅で、正面に見える鉾立岩方向へ200mほどの長さで砂浜が広がっていました。この辺りのキス釣り場としては、寒川浜に次いで根掛かりの少ない快適な投げ釣り場だったのです。投げ釣りを始めて、最初に70匹や80匹という好釣果を得たのもここでした。6色目の糸が出せるようになったと実感したのもこの浜です。
(中略) 私は学生時代を競泳一筋で過ごしてきたせいか、素潜りに熱中していた時期がありました。その頃に何度か勝木の海に潜っています。 潜ったのは勝木川河口周辺の岩礁地帯でした。海底には岩盤と白い砂地が混在し、岩に囲まれた小さな座敷のような砂地で、エサを求めて泳ぐキスを度々見かけたものです。多くは単独か2匹連れで、その座敷をテリトリーとしているようにも見えました。キスは非常に神経質で、岩陰からそっと見ている分には問題ないのですが、近づこうとすると一瞬で姿を消してしまい、到底水中銃で獲れる魚ではありませんでした。
浜の中央部は波打ち際からどんどん深くなっていき、およそ100m先で水深7mだったように記憶しています。海底が砂地の場所は素潜りには向かないので、潜ったのは勝木川右岸の岩礁帯に集中していました。
勝木川は、水量こそすくないものの、とても綺麗な川です。海中から川へ近づくと、真水と海水がぶつかる境界線で陽炎のように視界が揺らいで、川の流れを知ることができます。一旦真水に入ると視界は明確になるのですが、今度は海水側の風景がぼやけて見えるのです。海水と真水の屈折率の違いによるものなのでしょうが、とても面白い体験でした。
この境目には、フグの群れが川の流れを追うように泳いでいます。読者の皆さんには、勝木川のような小さな川の流れ込み付近で投げ釣りをしていて、それまで気配すら感じなかったフグに突然仕掛けのハリを全部取られたといった経験がありますか。この現象は、川からの真水の流れが潮流に押されたために大きく蛇行して、釣り座の近くをかすめた時に、真水の流れに乗ったフグの集団がエサに群がった結果だと考えられます。こういう場所で起こるフグ襲撃の多くは岸近く、しかも単発がほとんどです。仕掛けを取り替えたら、少し遠めにキャストすると、フグを避けることができます。(以下略)
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