B型人間の山歩き ブログ HOME Amazon 北穂高岳〜奥穂高岳
登山日記(2日目)
昨晩も気分の高まりからかなかなか寝付けなかったのだが、それでも寝床は快適だったので寝覚めも心地良い。 外に出てみると今日も快晴だ。ヒュッテの日記帳に書いてあったお客さんの日記を見ると、つい一週間ほど前まではずっと雨・雨・雨だったようだ。こればっかりは運だからしょうがないけど、神様、ありがとうございます。
よ〜し、快晴の涸沢カールをバシバシカメラに撮るぜということでヒュッテのテラスに出てカメラを構えたのですが、カメラの調子がおかしいのです。 今回の山行にあわせ、念願のデジタル一眼を購入したのですが(モノはこちら)、買ったばかりな上にド素人なもので使い方がまだよくわかりません。 レンズは望遠にできるのですが、望遠にするとオートフォーカスのピントが合わないのです。なんどやってもダメ。(@@;)お、おい、これからってときに故障かよ。そりゃねーだろ、、、
それでもあれこれいじくりまわしているうちに、レンズのAF(オートフォーカス)がMF(マニュアル)にスイッチが切り替わっているのに気付きました。なんだ、そういうことか。でも焦ったぜ、、、
それから、雲ひとつない青空も、写真に収めるとなると太陽の光との関係で濃い青に撮れることもあれば、白くもやったようにしか撮れないこともありますね。 だいたい順光(太陽を背)にすると青が濃く出ますが、逆光だと空の青みはよく出ないようです。これは高級なカメラを使っても基本的には変わらないみたいです。 やはり澄んだ青い空をバックにしてこそ山の写真は映えようというもの。いい構図で光の具合がバッチリ合えば最高なんですけどね。いつも思うとおりというわけにはいきませんね。
ひとしきり写真を撮って、テラスにある水道で顔を洗おうと思いカメラをぶらさげていくと、昨日からチラチラ見かける外国人のカップルの男性がひとりでいました。マイケル富岡を色黒にしてもう少し外人ぽくしたような、身長はゆうに180cm以上あるイケメンの彼に興味があったので、どこから来たのか訊いてみました(怪しげな英語で・・・)。すると、、、
「India」
「 ・・・・・ いんでぃあ?」
なんと、インド人だというではないですか。てっきりアメリカあたりだろうと思っていたのでちょっと衝撃的でした。旅行かと訊くと、そうだとのこと。
そのときはその程度の会話しかなかったのですが、朝食を済ませて出発の仕度をしてヒロカズさんより先に出てくると、テラスのベンチに先ほどのインドの彼が座っていました。 今日は雲ひとつない快晴。涸沢カールから眺める穂高連峰は、背後に紺碧の空を従えてこれ以上ないほどの景観を見せてくれています。 せっかくだからこの景色をバックにぜひ写真を残しておきたいと思い、ベンチに座っていたインドの彼に写真を撮ってくれるよう頼むと、快くOKと言ってくれました。 写真を撮ってもらい、サンキューとお礼を述べてカメラを受け取ったあとまた涸沢カールの写真を撮りまくっていると、後ろから「Excuse me」と呼ばれました。
今日はどこへ行くのかと尋ねてきたので、北穂高岳から稜線をたどって穂高岳山荘まで行くと答えました。彼は奥穂高岳から岳沢を通って上高地に下るとのこと。 しかしまあ外国人がこんな山の上にわざわざ登山に来るなんてよほどの山好きなんだろうと思い、インドの山にも登るのか訊いてみると、ヒマラヤのほうに行くとのこと。う〜む、それじゃあインドの山男ですな。以前キリマンジャロにも行って、空気が薄くて息が苦しかったというようなことも話してくれました。 その後もお互いの仕事などについて話していましたが、そのうちにカメラの話になりました。 彼のカメラはニコンのものでしたが、私のものはどこの奴だと訊くのでキャノンだと答えました。そして、、、
「AKIHABARA?」
で買ったのかと訊かれたのですが、よく秋葉原なんて知ってるなと思いつつも私は地元のケーズデンキで買ったので、私は違うが会社の同僚が秋葉原で同じカメラを買ったと答えました。すると、、、
「What shop? Good shop?」
と親指を立てながら訊くので、私も親指を立てて、「ヨドバシカメラ、グッドショップ!」と教えてあげました。
「Yo・do・・・?」
「ヨ・ド・バ・シ キャメラ! ベリーニヤーアキハバラステーション!」
「Oh! YO・DO・BA・SHI CAMERA! OK!(笑)」
お互いに指を立てて笑いました。あの勢いなら帰りに寄ったでしょう。お金持ちそうでしたし。
そんな会話をひとしきりしたところでヒロカズさんの準備もできたようなので出発することに。それではよい旅を!とインドの彼と握手をして6:20涸沢ヒュッテを発ちました。彼は笑顔で手を振って見送ってくれました。
ここから北穂高岳山頂まで3時間のコース。快晴に緑も雪渓の白も映えます。
ヒロカズさんは涸沢ヒュッテでストックを借り(1,000円。返却は上高地のインフォメーションセンター)、雪渓を軽やかに登っていきます。私もその後をゆっくり追います。実は昨日からうすうす気付いていたのですが、デジタル一眼を入れている大き目のウエストポーチが足とおなかの間に挟まって足が思うように上がらず、これが今回の山行が疲れた最大の要因でした。
私は今回初めて穂高に来たのですが、事前にこのあたりの写真とかは見なかったので前穂高岳がこんなにカッコよく美しいものだとは知りませんでした。北穂高岳、奥穂高岳よりも、個人的には絵になるのは前穂だと感じました。
また、この登山道は花も多く見られました。花の名前は(たぶん)です。
山歩きをしていて知っている花を見つけると、「ここにもあるんだ!」と嬉しくなりますし、知らない花を見つければ、「これはなんという花かな?」ということで写真に撮って後で調べる楽しみがあるので嬉しくなります。 山に咲いている花がいいところは、それがまさに「天然のもの」だからなんですよね。下界の花屋や家々の庭にははっきり言って山野草より派手で華麗な花はたくさん咲いています。派手さや華麗さはないけれど、昔からそこに「住んでいる」ところが、山野草の素晴らしいところですね。
このハシゴを登りきるとやや広いスペースになっていて周囲の眺めもいいので一服することに。常念岳もその秀麗な姿を現してくれました。
北穂分岐まで来れば北穂山頂はもうすぐ!
そして9:25、ほぼ3時間で北穂高岳に到着。ああ、やっと着いた!山頂は360度の大展望。しかも快晴。今まで見えなかった景色がぐるっと広がりました。あっ!槍ヶ岳があんなによく見える!涸沢からの登山道では槍ヶ岳はまったく見えません。私はこれがいままでで一番間近で見た槍ヶ岳だったので感動もひとしおでした。ここまで歩いてきた苦労が報われ、浩然の気を養わせていただきました。
う〜む、素晴らしい。槍ヶ岳の向こうには去年登った鹿島槍ヶ岳が。それから槍の向こうに水晶岳、鷲羽岳、薬師岳、剣岳もちょっと見える。西側には笠ヶ岳がドーンとすぐ目の前にあるし、北アルプスの山々が一望だ。もちろん奥穂高岳、前穂高岳もよく見える。いつもこうして晴れるわけではないのであろうから、よかったよかった。
トイレを借りに北穂高岳山荘へ行ってみると、テラスからも槍ヶ岳方面の素晴らしい眺めが見えました。
さて、記念写真も撮ったし、では穂高岳山荘目指して行きますかということで北穂分岐まで戻ります。そして北穂分岐から穂高岳山荘までは険しい岩稜帯歩きとなります。
私は岩場歩きは結構好きで、割とヒョイヒョイ行ってしまう方ですが、初心者の人にはこのコースはちょっと難しいですね。涸沢岳を登りきるまでず〜っと、岩場を登って下って横切って這いつくばって、急なところもクサリをつかんで重い尻を何とか持ち上げやっとこさ上り下りし、更には高度感満点のハシゴにつかまって冷や汗をかいたりと、やはり初心者だけで行くのはやめておいたほうがいいと思います。ザイルとか特別な装備は必要ないですけどね。
振り返るといつでも槍ヶ岳がけざやかにその鋭角な姿を見せてくれ、離れるほどその裾野が広がっていきます。右には笠ヶ岳がこれまた巨大な戦艦のようにずっと併走してくれます。
涸沢槍まではまあ、岩場ではありますが、怖いというほどではありません。そしてこれより本日のメインイベント、涸沢岳となります。
涸沢岳は取り付きから急な登りとなります。そしてこれまでとは違って、クサリに頼らなくてはとても進めないようなところが何箇所もあります。
今回の山行で本気でコワいと思ったのはこの涸沢岳の登りだけでした。というか、今までの私のそう多くない登山経験の中で一番コワくて恐怖感を煽られる場所でした(私的第一位!)。しかも、その区間が結構しつこく長いのです。ここは悪天候時はかなり要注意でしょう。
穂高岳山荘の夕食時に一緒になったオバサマも、「あんた!大キレットの飛騨泣きより涸沢岳の登りのほうが全ッ然、怖かったわよ!」とおっしゃってました(わたしゃあんたのパワーのほうがコワい・・・)。
危険な涸沢岳をなんとか登りきり、左は涸沢岳山頂。もうここまで歩いて来てヘロヘロだったので山頂へ行くのはパスしました。
涸沢岳山頂を横目に見ながら歩いていくと、ようやく本日のゴール、穂高岳山荘が見えてきました。
涸沢岳をゆっくりと下ると、13:20、やっと穂高岳山荘に到着。涸沢ヒュッテを出てから7時間かかりました。
う〜む、ここからの眺めもいいなあ。涸沢ヒュッテをはじめ涸沢カールが一望だ。その向こうには屏風岩が鍋をかぶせたように置いてあり、更にその向こうには二等辺三角形の常念岳と、その横に平らな蝶ヶ岳のパノラマが広がっている。
穂高岳山荘もログハウス調のウッディな造りでいい感じ。早速チェックインして「浅間山」という部屋に行ってみると、ここの布団も広くはないけど寝るには十分なものでふかふかしており、綺麗なシーツも掛けてありました。涸沢ヒュッテ同様大変快適でした。
疲れたのでゴロンと横になって暫し休んでから、テラスに出て食事&お疲れビールタイム。さすがにここには生ビールはなく、缶ビールで乾杯。
ふと見ると、すぐ目の前で20人ほどの中年の男女のグループが板の間で車座になって延々と合唱しているのですが、、、
♪ものすごく楽しそうです!
なんだかこのグループのいる空間だけは何か特別なオーラで包まれているようにも感じるのですが、、、あ!
江原啓之先生! 先生には何色のオーラが見えますでしょうか?
あんまり楽しそうなんで仲間に入りたかったのですが、、、
全然知らない歌ばっかりだったんであきらめました; (残念!!)
とまあ冗談はさておき、山に来れば特にすることもないし、昔は若者もこういう風に青春を謳歌したんだろうなあ・・・と、ノスタルジックな気分にさせられたのは事実です。 そんな感慨に浸りつつ、ビールを飲んだら眠くなってきたので一眠りすることに。
一眠りすると5時になり、夕食の案内放送が入ったので食堂へ。食卓では西穂から奥穂を越えて1人でやって来たというオバサマや、南岳から大キレット〜北穂〜涸沢岳を越えてきた、前述の「あんた!」のオバサマなどと一緒になり、中年のパワーというものをしっかりと感じさせていただきました。
「あなたたちみたいな若い人はいいけど、私らみたいな50代60代になると2週間に1回は山に行くようにしないと筋力が落ちちゃうのよねぇ。だから再来週もテントかついで南アルプス行くのよ! あはははははははは!」
(・・・・・オバサマ、その元気ならわざわざトレーニングに行かなくても大丈夫だと思います・・・)
穂高岳山荘の料理も山小屋のものとしては申し分なし。いやあ、いい時代に山登りができて幸せ。
そして食事の最中にふと顔を上げると、ちょっと離れたところになんとなく見覚えのある顔が・・・。あれ?あの人はもしかしたら新潟県中越地震を喰らった越後駒ケ岳の駒の小屋で一緒に不安な夜をともにした人では・・・。 よく似ていましたが、2年前に僅かな時間をともにしただけだったので、思い違いかなあと思いつつもこちらは食事中でしたし、その方はすぐに何処かへ行ってしまったのでそのときはそれきりだったのですが・・・
食事を済ませてからもまだ外が明るかったので外に出てみると、なんと先ほどの中年合唱団が、、、
まだ歌ってやんの! ヽ(゜□゜;)ノ マジかよ・・・
そんなにレパートリーがあるんすか; 本を見てもおられましたが、さすが年季の違いを感じます。恐れ入りました・・・
そうこうしているうちに陽も暮れかけてきて、山荘のお客が西の空を見に出てきました。
ガスがかかったり、晴れたりを繰り返します。ガスが晴れると 「オオオーッ!」、ガスがかかると 「あああ〜」 とみんな声をそろえていうのでおかしかったです。
老若男女、みな西の空を見て顔が朱色に染まっています。知らないもの同士がこの自然のスペクタクルをみていい顔をしているのはいいもんだなあと、しみじみ感じました。
この夕陽を見ながら新潟の実家に携帯(au)で電話をかけてみたら、まるですぐそこで話しているかのようにお袋の声がクリアに聞こえました。
この後、談話コーナーで穂高岳山荘の四季のDVD上映会があり、穂高岳山荘の歴史やスタッフの方の苦労を知りました。こんな山の上にこれほど快適な山小屋があるなんて、ホントに素晴らしいことです。それも関係者の方のご努力があってのことなんですよね。
それからその後も白籏史朗さんと同年だというおじさんと、シアトル出身だというアメリカ人と3人でうだうだと話し面白いエピソードもあったんですが、もういいかげん長くなりすぎたので割愛します。
この夜も広くはないけど十分寝心地のいい布団でゆっくり眠れました。当然のごとく相部屋だったんで、オヤジのイビキをシャットアウトする耳栓はやはり欠かせませんでした。
3日目 : 穂高岳山荘〜奥穂高岳〜前穂高岳〜上高地 につづく。 1日目 : 上高地〜涸沢ヒュッテ 2日目 : 涸沢ヒュッテ〜北穂高岳〜穂高岳山荘 (このページTOP)
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